FPの実力ってどのくらい?②| FP1級取得者でも基礎の基礎を理解していないことも

前のページで書いたように、FP2級のレベルはちょっと残念なものでした。知識の幅はすごく広いのですが、一つ一つの知識が水溜まり並みに浅いのがFP2級という理解で良さそうです。

知識が浅いから、それだけで意味が無い資格だとは言いませんけどね。資格を持っているからと言って、何か特別な事ができるレベルでないのも事実です。

それでは、FP1級だとどうなのでしょうか。FP1級レベルなら実践で使えるような知識を持っているのでしょうか。あるいは、専門家と議論できたりするのでしょうか。

FP1級の知識も怪しいなあ

これまた残念なお知らせなのですが、FP1級でも個々の分野の知識のレベルはたいしたことがありません。一つ一つの分野での知識の浅さに関しては、FPという資格の性質上仕方が無いのでしょね。

こんなふうに入れる理由の一つは、FP1級取得者が書いた本に残念なものが多いからです。

FP1級を持っていると、入門者向けの資産運用の本や雑誌の記事を書くという仕事が来ることもあるようです。そして、実際に彼らの文章を読んでいると、知識の浅さが垣間見える事も珍しくありません。

浅いだけならまだいいのですが、明らかに間違っているようなケースすらあるんですよね。実際にそんな例を一つご紹介しましょう。

偉そうに外国為替の入門書を書いたのに、素人としか思えない間違いをしている

今回見つけたのは、外国為替に関する入門書です。著者はFP1級取得者で、これまでに株式や投資信託の入門書を書いた経験があるようです。この事実から、おそらく、資産運用の分野に強いFPであることがうかがえます。

さて、この外国為替の入門書ですが、本のでき自体はそれ程悪いものではありません。おそらく何冊か外国為替の本を読んで勉強されたのでしょう。幅広い知識がコンパクトにまとまっている印象でした。

ただ、大事な部分で決定的な間違いがあったのです。外国為替についてきちんと学んでいる人なら、決してやらないような間違いです。

専門家なら絶対に間違わない部分を間違っていました

具体的にどんな間違いかというと、「高金利通貨は為替レートが上がりやすい」という趣旨の事が書かれていたのです。例えば、アメリカの政策金利であるFFレートが高ければ、将来はドル高になるということことです。しかも、この点について、見開き2ページを使って説明していました。

しかし実際は正反対で、「高金利だと通貨安」と考えるのが普通です。FFレートが高ければ、将来はドル安に動くと考えるのが普通なのです。

私が書いたことろで信用できないという人もいるでしょうから、専門家の書いた文章から引用しておきましょう。

「年金のような長期の機関投資家の場合、外国債券に投資しても金利差は為替下落で消えるという前提にたつ。このため、日本債券と外国債券の長期的な期待リターンは同じと考えることが基本」(格付投資情報センターの川村孝之投資評価本部フェロー)という。1

金利差というのは、日本債権と外国債券の金利差の事ですね。海外の金利が高い債券を買っても、その通貨が安くなって高金利の外国債券を買うメリットが無いと主張しているわけです。

ちなみに、金利が高い通貨が通貨高になるなら、高金利の通貨はもっとガンガン買われるでしょう。利息による収入が大きいうえに、為替差益まで狙えるからです。でも、高金利通貨に踊らされているのって、よく分かっていない素人だけなんですよね。

基礎の基礎が分かっていたら絶対にしない間違い

さて、このくらいならたいした間違えではないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。一つの間違いを大きく取り上げて、揚げ足をっているように感じる人もいるでしょう。

しかし、実は、外国為替においては、この間違いは決定的なものなのです。「高金利は通貨高の要因」なんて書くと、専門家からは、この人は素人だとい烙印を押されるでしょう。

というのも、「高金利は通貨安」というのには、しっかりとした根拠となる理論があり、実務上も利用されているのです。具体的には、為替予約や為替の先物のレートというのは、高金利だと通貨安になるという考えが基本にあって決まっているのです。

もう少し厳密に言うと、金利平価説というものを使って計算されるのですが、その根底にあるのは金利が高い通貨の為替レートは下がるという考え方です。

ですから、入門書で「高金利通貨は通貨高の要因」などと書こうものなら、「こいつは基本が分かっていない」と即断されてしまうわけです。その点に関しての間違った解説が、ダラダラと書かれていたらなおさらです。

金利アップは通貨高要因

一応、少しだけこの本の著者をフォローしておくと、「金利の上昇は通貨高の要因」という事実は確かにあります。金利が引き上げられると、その直後は通貨高になるのです。

おそらく著者は、これと混同してしまったのでしょう。

しかし、例えば高金利の通貨が利上げして金利差が大きくなれば、結果的に前より速いペースで為替レートが下落します。いったん為替レートは上がるが、その後は通貨安になるわけです。少なくとも、理論上は、そう考えられています。

それにしても、この程度の実力しかないのなら、何で専門家と共著にするとか監修を頼むなどしなかったのでしょうか。自分はFP1級だから為替の入門レベルの本なら楽勝だとでも思ったのかなあ。

FP1級は専門家ではありません

このように、FP1級の取得者といえど、専門でない分野では基礎の基礎レベルが分かっていなかったりします。たちが悪いことに、自分の理解が不十分であることを認識しないで本まで書いてしまっているのです。

広い範囲でそこそこのレベルの知識を有している事を証明するという意味で、FP1級は価値がある資格なのだとは思います。でも、逆に言うと、個々の分野では素人並みの知識しか持っていないこともあるわけですね。

このあたりの認識は、持っておく必要があるでしょうね。そうでないと、今回紹介したFPのように、恥ずかしい本を出版することにもなりかねません。

専門分野を持っている人が、プラスアルファでFP1級を取るような場合は、必ずしもそうでないのかもしれません。しかし、FP1級の取得者でも個々の分野に対する知識は、その道の専門家には遠く及ばない可能性があるわけです。酷い場合は、ちょっと詳しい素人以下です。


  1. 高金利通貨はずっと上昇する? 外貨投資の誤解(1)
    編集委員 田村正之
    日経新聞 2010/5/24 7:00 []

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